with Wine | ワインショップ&ダイナー FUJIMARU 東心斎橋店 スタッフブログ
2015.06.28
人が変わり街も変わるのが世の常。
しかし六十年間変わらないお店がありました。
連日連夜賑わいをみせる道具屋筋横や味園ビル周辺は、いわばウラなんばの玄関口。
一方で「酒兵吾」さんに始まり「トレイシー」さん「笑和」さんなどが軒を連ねる
NGK裏のさらに裏の通りは、ウラなんば界隈でもディープ指数が非常に高く、
一見さんを寄せ付けないオーラが漂っています。看板がほとんど見えず中からは常連さんの笑い声がひっきりなし。
そんないかにも濃そうなお店が並ぶなか、大々的な看板と古臭さを感じさせる
ショーケースが目にとまる「あばらや」さんは、なんとなく浮いた存在に思えていました。
“ビールとお通し・お造り・揚げだし豆腐セット 1,000円”
しかし、この貼り紙に導かれるようにお店の扉を開きます。
店内にはBGMがなく、職人さんが醸し出すピリッと引き締まった空気。
コップにビールを注ぐコポコポコポッ・・という音すら憚られるくらいの
凛とした佇まい。小魚の煮つけにふきのとうと合鴨ロース。
地味ですが滋味のあるお通しにビールが寄り添い、少しだけ緊張が解れてきました。
お造りは鮪の赤身に烏賊、蛸、カンパチそして鰈。
小ぶりながら歯ごたえがよく、思わず笑みがこぼれる美味しさ。
烏賊を咀嚼しているときの表情なんて、思い返しても赤面するほど。
ビールを早々に飲み干し、灘の日本盛をひやでいただき揚げだし豆腐に備えます。“外はカリッ、なかはトロトロ”なんてたこ焼き屋さんのうたい文句みたいですが、
ほんとにそんな感じがする揚げだし豆腐。純白のお豆腐に出汁がよく染みこんで、
酒を誘引してやみません。
お酒を何種類も置いていることをウリにするお店が多い中、頑なに一つの銘柄を
提供し続ける老舗料理店の矜持も清々しいものがあります。
「勉強不足で、これしか知りませんから。」と謙遜される職人さんのはにかんだ顔が、
人肌程度に燗をつけた日本盛をグッと美味しくしてくれるんです。すっかり出来上がったころに名物・鯖寿司も出来上がりました。
見目麗しく艶やかな出で立ち。矢も楯もたまらず口に放り込むと、
木の芽のシュッとした香りに、塩で〆られた鯖の旨みだけがじっとりと、ゆっくりと、
浸透してきました。酢飯には鯛田麩が挟み込まれ、何個でも食べられそうな飽きない美味しさ。
六十年に渡り大阪の人を喜ばせてきた、実に緻密な計算が施されていたのです。
鯖寿司の余韻覚めやらぬなか、カンパチと穴子の握りでソフトランディングへ。
最後に温かいお茶をいただき、満面の笑みでごちそうさま。
すぐ外は喧騒に沸くウラなんばとは思えない、静かな空気と上品な趣き。
六十年という時の流れに思いを馳せたくなる一夜となりました。
名物・鯖寿司はお持帰りもできるそうです。なんばのお土産にぜひ。
Dai Aramaki
あばらや
大阪市中央区難波千日前2-14
06-6631-0223
16:00~23:00
定休日:日曜・祝日
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